ワルツの終わるとき
この感情は寂しいというのだろう、ぼんやりと考えた。
人が成長するとき、傍にいる人は寂しいものだ。
きっと風早だってそうだろうと思う。
人に興味がなくて、それでも彼女だけは興味とか垣根とかを飛び越えていつだっていた。
僕の知ってる彼女は弱くて守るべきで。
心のどこかでそれが嬉しかったことに気づいた。
今彼女は人の前に立ち、人を導く。
迷いなく前を見ている。
女王になろうとしている。それはつまり僕らの手から離れるということで。
彼女はいつも自分が僕を追っているとすねるがそれは本当は逆だった。
いつだって彼女は先を行ってしまう。光の中を。
まぶしくて届かない。
焦燥感。
寂しさ。
今まで穏やかだった僕という水面に波紋を作れる唯一の人間。
それは恋愛というのだろうか、いや、恋愛なんてとっくに超えている。
この感情に名前なんてずっとつけられなかった。
口に出せない、なんと言ったらすらわからない。
ただ、隣にいるのは彼女としか考えられなくて。
隣にいたいのは彼女だけで。
いつかこれを言わなくてはいけない。
そんな日はもうすぐ来るのかもしれない。
那岐と千尋の関係は非常に微妙だと思う。
離れていく彼女を那岐はどんな感情で見ているんだろうなぁって。
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