つぼみの虜
柊×千尋
風が彼女の髪をふわりとゆらし、うなじがうっすら見えその美しさに息を呑む。
そんな男の気持ちなど知らず、彼女は問いかけた。
「ねぇ、柊なにかほしいものない?」
「ほしいものですか?」
彼は考えるふりをするが、本当は一つしかないと頭で思う。
そう、たった一つだけ、彼女それだけが彼のほしいものだ。
「あなたの麗しい花のかんばせをこうしてみることが私の唯一の願いです。」
少しおどけたようにいったが、それは本心で。
この美しい姫を見て入れるならなにもいらないとすら思う自分に男は自嘲する。
けれどもなぜだろうか、ここまで心とらわれて、
奪われて自由などないけれどもうれしいとすら感じる。
自分はなによりもこんなこと厭い、むしろそのような恋にとらわれた人をみては嘲笑っていたのに。
そんな男の気持ちをわかるはずもない、彼女は男に合わせてくいと顔を上げた。
身長の高い彼の目を見るためには顔を上げなくてはいけない。
そしてその瞳を見上げて少しあだっぽく言う。
「見るだけでいいの?」
それは男にとって新鮮で。
いままで少女だ少女だと思っていた彼女がみせる、においたつような色気で。
かれは頭がくらくらするようだった。
「そうですね。できれば触れたいですね。」
そういわれた彼女はまた少女のように微笑んだ。そして背の高い彼の首に腕を巻きつけ抱きつく。
「これでいい?」
「もう少し。」
彼の手がふわりと頬をつかみ、彼女に優しく口付ける。
口ではなんと大人げだけれども彼の口付けはまるで優しく、甘く。
少年のようで。
彼女はうっとりとまぶたを閉じた。
そして、その彼女をうっすらとまぶた開き彼は見て思う。
やはり己のほしいものはいつだってこの姫だと。
どんな宝も、どんな素晴らしい名誉もいらない。
ただこの愛らしい姿を見れるだけで、己は幸せで。
この美しい開きかけのつぼみのような姫に、自分はとらわれたことを悟るのだった。
初柊。誕生日近いから書いてみた。千尋は将来すごい女になりまっせ!
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