比翼連理


今朝、会議のさなか、私は続く激務のせいか、意識がとんで、 倒れた。 目の前が暗転して、そして今目をあければ見知った顔。 「あ。那岐。」 愚鈍な私のそんな声に那岐の綺麗な顔の眉間に皺がよる。 「千尋。」 那岐はいつもそうだけど、本当に怒ったり激したときには言葉少なになる。 今も、私の名前を呼ぶその一言だけで十分に那岐の感情が伝わってきた。 要するに、怒っている。 「ごめん。」 「人が視察から帰ってくれば・・・。かえってくるなり倒れたとか聞くし。」 「ごめん。」 こうなったら平謝りで、私に出来ることは謝ることだけ。 那岐の不安が解けて、落ち着くまで。 わかってるから、本当は那岐が怒っているのじゃなくて、不安なだけだって。 「ごめん。」 「べつに、もういいけど。」 「体は痛くない?」 寝転んでいた体を起こそうとした私に優しい声。 那岐の不安のにじんだ声。 「しっかりしなきゃ、だね。」 那岐が視察に行った昨日、とまりで帰ってこないことをいいことに溜まった庶務をこなしていた私。 普段止められるのを思いっきりできたのが半分、那岐がいない夜を紛らわすの半分。 まさか寝不足で倒れるなんて思わなかった。 「しっかりしなくていい。だから頼むからもう頑張らないでくれ。」 そうやって彼は弱気な声で私を抱きしめる。 震える声が感情を伝えて。 「ごめん。」 昔した約束を思い出した。 私と那岐が二人で一人なのは変わらなくて。 もう一度ごめんとつむごうとした唇は塞がれた。 不安を消すべく、何度も何度も、口付けるために。

那岐って繊細そう。一応、前の一蓮托生的な流れ。

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