一連托生


「那岐のばか!」 私の怒鳴り声に那岐は別段なにも感じている分けなさそうに肩をすくめる。 けれども、腕に先ほど出来たばかりの怪我が痛んだのか顔を引きつらせる。 私は泣きそうで。 それをわかっただろう那岐は痛いとも一言もらさなくて。 それが腹立った。 「なんで、あんな無茶したの?!」 先ほどの戦闘、みんなで戦っている中、私の敵は意外と強くて。 やられる、と思った瞬間、痛みはこなくて。 気づいて目を開けたら、那岐が腕から血を流していた。 その瞬間私の心がどれだけ凍りついたか、自分の痛みより痛んだ心を那岐はわかってない。 それどころかいけしゃあしゃあと肩をすくめている。 「別に千尋が無事だったならいいだろ?」 「よくない!那岐の犠牲があって無事でも全然嬉しくないもん。」 「僕はそれでいいよ。」 「よくないってば!」 「千尋さえ無事なら別にいい。」 「なんでそんなこというの?」 「本当だからだよ。自分なんて別に。」 「那岐はわかってないよ、私だっておんなじなんだよ?」 涙声でそういうとやっと那岐は私の話を聞く気になったのかこっちを向いて目を合わせた。 「那岐が傷つくくらいなら私が傷ついたほうがいいの。」 「僕はやだけどね。」 「じゃあ同じじゃない?お互いそうなんだよ。」 「そう、かな。」 「そうだよ。私は那岐が傷つくくらいなら自分が死んだ方がいいって思うもん。」 そこだけは本当だときっとにらめば那岐は少しすねたように口を曲げた。 「言っとくけどね、那岐は那岐を大事にしないと私のことだって粗末に扱うことになるんだからね?」 「なにそれ。」 「だって私たちお互いの命綱みたいなもんでしょ? 那岐が死んだら私だって死んでやるんだから、那岐は死んじゃだめだよ。」 「・・命綱か。」 「そうだよ、一連たくせいってね!」 「たくせいじゃなくて托生だから。」 「あ・・。」 「わかったよ。でも逆も然りだからね?」 「うん。私も私を大事にする。」 私のよくわからない理論がことのほか那岐は気に入ったのか、 笑っていった。 「でもさ、それ三段論法でだれかさんも死にそうだよね。」 「え?」 「千尋は俺が死んだら死ぬんなら、俺が死んだら風早も死ぬってこと!」 おかしそうにいう那岐に私も妙に納得してしまって、 不謹慎ながら二人でおなかを抱えて笑ったのだった。

千尋ってなんだか那岐には怒りそう。
そして風早の扱いがひどいっていう。

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