はなかんむり


 休憩を取ろうと提案したのは、このきれいな花畑があったから。 ちょっとわがままが言いたくなるくらいのすばらしい花畑。 枯れ行く大地が問題になっている昨今では珍しい、ピンクや黄色、 色の洪水に魅了された私が出した提案は、あっさりと通った。 多分私に気を使ってくれた半分、自分たちもこの場所を気に入った半分だろうって思う。 私は草のクッションにすわり、白い花を見た。 向こうの世界では白つめ草と呼ばれてた花にそっくりで、懐かしさにせっせと編み出した。 白い花がつながって、子供のころ向こうの世界であこがれたりもこっそりしたお姫様。 もちろん風早や那岐には恥ずかしくていえなかった。 でも、その姫だって立場になってべつに何もいいことはないってつくづく思った。 だって姫がきれいなのは姫だからじゃない、もともと美しいからで。 私が姫っていったっていきなりそれこそシンデレラみたいにきれいになるわけでもなく 変わらない私なわけで。 一つため息。 「姫?どうかしましたか?」 「あ、べつに特にはないよ。ただちょっと。」 「ちょっと?」 怪訝そうな布都彦の手には白い花があった。私がしていたことを忠実に再現したらしく、 きれいに編まれた花冠のかけら。 「布都彦はつくったことあるの?」 「これですか?姫がなさっていたことをまねしただけです。」 そういってふにゃりと笑う彼は男の子とは思えないきれいさで、 花畑が似合うなぁなんてぼんやり考えた。 「姫?」 「ちょっとぼぉっとしてた。」 花を編む手を進めると同じように彼の手も動く。 一個編めば一個編んで、一個編めばもう一つ編んで。 気づいたらなわとびができそうなくらい長い物ができてたりして。 「ところで、これはなんなんですか?」 「あー、はなかんむりだった、んだけどね。」 「はな、かんむりですか?」 「うん、なんかぼーっとしてたら長くなっちゃった。」 逆にひとつ一つと解いて短くして、一番の正念場である丸くとめると、 ちょうどいいサイズのはなかんむりが、二つできた。 わたしのと布都彦の。 「完成だよ。」 「どうぞ。」 彼はうやうやしく私の頭に花冠をのせた。 なんだかてれくさい。私もだから彼に花冠をあげた。 「似合うよ。」 「まさか。」 花冠をかぶった彼は花畑にとけこんでて、お姫様みたいだった。 「お姫様みたい。」 「姫?」 「向こうの世界でいたプリンセスってやつ。すごくきれいなの。」 うっとりと見上げる私に、彼は少し乱暴にはなかんむりをつかんで私にかぶせた。 二つの冠が頭に載っているわたし。 「姫のがきれいです。」 「せっかくかわいかったのに。」 「いいんです。男ですから。」 「でもきれいだったのに。私なんか似合わないよ。」 ちょっとした、あんなに男なのにきれいなのを見せられた嫉妬か強くすねてみた。 「そんなことありません!」 かれは私がなぜかへこんでいると思ったのかはっきりとした声で私の手を握って熱弁した。 「姫にすごく似合っています。冠は姫のためのものですから。」 そういって笑う彼の笑顔のきれいなこと、きれいなこと。 自分がほめられているのをそっち抜けで、うっとりと見ほれてしまった。 「花なんて姫を飾るためにあるようなものです。」 真剣な顔でそういいきる彼の言葉はくすぐったくて、でもまるで自分がお姫様みたいで。 いや、本当にお姫様なんだけど。 「大げさだよ。」 「いいえ、姫は、きれいです。」 少し熱っぽく私を見てくる彼の視線に頬が暑くなるきがして。 握られた手が暑くて、それでも心地よくて。 「ありがとう。」 素直に伝えた感謝の気持ち。 彼はふにゃりとまた笑って。 「あわわわ、すいません、勝手に手を握って!」 あわてて、手を離したんだった。 ほのぼの
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