「アカリ、アカリってば。」
自分の名前が呼ばれることに気付いて、アカリはハッと顔を動かした。
そこにはにやにやと笑う友人たちの顔。
今日は仕事を休んで女子会だ!と意気込み、キルシュ亭で飲みながら語らい始めたのは、
夕日がちょうど沈むころ。
今は、きっと月が天頂に届くころだろう。
女の子でかましくしゃべるのは話題が尽きない。
そして、話題提供してしまった。
「ほーんとに、分りやすいわね。」
にこにこと笑いながら、大人の笑みを浮かべシーラはそういう。
恥ずかしいのを隠したいし、感情も隠したい。
けれども、この友人たちに隠せるわけがないということをアカリは知っていた。
「大きな声で言わないで!」
ただかの相手に気付かれないように、そう伝えれば、二人は顔を見合わせた。
「えーと、まだ付き合ってはいないの?」
「そりゃあ!そんなわけないじゃない!」
アカリの声は少し響く。
その場にいる人たちは少し彼女のほうを見るが、彼は見ない。
なのに、少し声のトーンを下げて三人でしゃべっていると時折、やさしくこちらを見るまなざしが一つ。
気付いてないのだろうか。
「あー、鈍いのはお互いさまってことね!」
目線はからむことはないようだけど、そばにいればすぐわかるこの視線。
ほどなく、この二人はくっつくだろう、友人二人はカクテルを揺らしながら、
お互いの目をあわせて確認しあった。
004:隠そうとするほど隠せなくなるの
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