早起きのススメ 志水×香穂子


「志水くん!?」 朝、新聞を取りに出た早朝、それは私にとって早起きだったはずなのに。 玄関のフェンスに寄りかかった彼がいてびっくりした。 まさか自分が思っていた以上に時間が遅いのかとも考えたが、 家全体をみてもそんなことはない。 そうやって、驚いている私に彼は赤くなった鼻がかわいい顔で言った。 「あ、先輩。」 寒いのか多少舌ったらずなところが愛らしい。 しかし、この冬の寒い中こんなところで待たれても風邪をひいてしまいそうで。 「志水くん、中入って。」 「え、でも。」 「いいから、風邪ひいちゃうよ?」 そういって家の中に導く。 朝の忙しい中に、親に説明をするのも面倒だったから、 そそくさと私の部屋に招いて。 入ったとき彼はリラックスをしたように深呼吸をした。 「先輩の香りがします。」 どうして、このかわいい彼はこんな言葉をいとも簡単に普通に言ってしまうんだろう。 他の誰かがそう言ったって気味が悪いと思うかもしれないけれど、 彼が言うと私の中にしっとりと降り積もる雪のようになる。 「どうして、あんな早くからいたの?」 ちょうどいいベッドの上というポジションを見つけたのか少し眠そうにしている彼に聞けば。 「夢を見たんです。」 「夢?」 「はい、先輩が出てきて、すごくきれいな音聞かせてくれて。」 「私が?」 「はい。」 「だから、会いたくなってしまって、気づいたらここにいました。」 にっこり、幸せそうに微笑まれると文句もでなくて。 次第に私の頬が熱くなっていって。 たまに私はこの天使のような彼に愛される資格があるのだろうかって思うけれど。 こうもまっすぐまなざしを向けられるとそんなこと問うことすら間違っているかのように見えて。 まるで綿菓子のように、彼は私をやわらかな愛情で包んでしまう。 いとも簡単に。 「ありがとう」 「お礼をいわれることしてません。」 「ううん、私も早く会いたかったから。」 「うれしいです。」 微笑みかける彼にもう耐えられなくて私は抱きしめた。 「先輩。」 座っている彼が私を見上げて、目を閉じて唇が触れる寸前。 「香穂ー、いってくるわねー!!」 母親の、元気すぎる声が聞こえてわれに返った。 「あ、い、いってらっしゃい!!」 「戸締りとかぎしめて頂戴ね?遅刻しないように気をつけなさい!」 「うん。」 脱力するほど、先ほどのムードがぶち壊しで、がっくしと座り込んだ私に、 今度はベッドに腰掛けて高くなった彼の唇が降り注いだ。 「!」 まるで、小鳥みたいに軽く掠めて離れた唇なのに私は頬が熱く感じる。 「早起きしてよかったです。」 なんだかほくほく笑顔な彼に後ろを向いてもらい、無事着替えて 私たちは学校へと向かったのだった。

志水くんは私のミューズです。こねたが沸きすぎます。そして甘い。

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