ベイビーベイビー 志水×香穂子


「香穂先輩。」 放課後の正門前。 彼はまるで私しか見えてないようにこちらにまっすぐに向かってくる。 その姿はとても愛らしくてうれしくて。 けれども、私は周りの目線を感じて瞳をそらしてしまう。 「一緒に帰りましょう。」 「う、うん。」 「いやですか?」 上目使いにじっとみつめてくる彼。 愛らしい彼に逆らえるわけもなく、二人で帰る。 大きな楽器をしょった彼はすぐ横でにこにこしていて。 クラスメートに言われた言葉を思い出す。 「あんたたち距離がやたら近いのよ。だから絶対付き合ってると思った!!」 ふと横を見れば確かに近い、あとちょっとで腕がぶつかるくらい。 でもそれはやさしい声である志水君の声を聞き取るためだって言い訳するけど。 ちょっとさりげなく距離を広げてみる。 志水君は相変わらずかわいくて、この時間はとても幸せで。 すぐに家に着いちゃって。 彼はいつからか私を駅にいくには遠回りなのに家まで送ってくれるようになった。 「もっと一緒にいたいだけです。だめですか?」 そんな風に言われて断れる人がいたら見てみたい。 もちろん私もうれしい。一緒にいたいのは私も一緒だから。 「もう、家に着いちゃいますね。」 さびしそうにそういう姿は本当に愛らしい。 「そうだね。」 にこりと微笑もうとしたらすぐ道の反対に同級生がいることに気づき顔がこわばってしまう。 「あの、ここまででいいよ?」 「家まで送ります。」 「平気だよ?」 やさしく笑って見せたつもりだけど、志水くんは固まってじっと私をみつめてきた。 「なにか僕先輩にいやなことしましたか?」 「え?」 「今日の先輩僕を避けてませんか?」 「そんなこと。」 「ありますよね。」 志水君は周りが思っている数倍もこだわることには敏感だ。 きっと私のやってきたことを一つ一つ感じていたのだろう。 なんだか悪いことをしたと思うけども、彼にはきっと人の目線とか、 からかわれてやだとかないんだろうって思う。 私は周りの目ばかり気になってしまう。 「僕のこと嫌いになりましたか?」 「そんな分けないじゃん。」 「でも。」 「そうじゃなくて!」 むしろ好きといおうとしたとき、近所のおばさんが通り、とまる私の声。 「・・帰ります。」 「ごめん、そうじゃなくて、私周りの目とか気にしちゃって。」 「周りの目ですか?」 「そう、なんかからかわれたりするのやで。恥ずかしいし。」 「僕とそういう風にうわさされるのいやですか?」 「志水くんは嫌じゃないの?」 「はい。むしろうれしいです。」 にこりと笑う彼はかわいいけれどよくわからない。 「僕は香穂先輩とうわさになって皆が知ってくれたらいいと思います。」 「え、なんで?」 「そうしたら、香穂先輩に近づく人減るじゃないですか。」 当然のようにそう言った彼に私はびっくりしてしまった。 それ以上に彼がそんなこと考えていたなんて知らなくて。 「でも先輩が嫌になるならやめます。」 さびしそうなこの天使だと思っていた子悪魔の姿に私はほだされて、 赤い顔で言うのだった。 「べ、別にいいよ。私も、やだもん、志水君に近づかれるの。」 赤い顔にすらせずにそんなことをいえる彼は強いとおもうのだった。

志水くんは天然小悪魔ちゃんだと思う!あーかわいいよ、志水くんは。

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