恋愛方略


もともと田舎に住んでいる私たちは買い物だとかデートだとかはあまり無くて、 大体会うのはお互いの家か神社、そして小さな商店街くらいだった。 さらに先輩はもともと人の多いところもすきではないようで、 というよりも人のいるところでは手をつないだりするのを嫌がる。 結局家にいるときが一番幸せだという結論に私の中でなったんだった。 それでもやっぱり年頃の少女としてはデートといってかわいい格好をして出かけたい。 今日も私の部屋で横になって雑誌を読んでる先輩に私は声をかけた。 「先輩先輩、ここ行きたいです。」 同じように私もねっころがり読んでいた雑誌の一ページをさしてそういうと、 先輩は怠惰な動きでこっちをみる。 「あー、なんだ?水族館?」 「そうです、最近オープンしたらしくて。ここならいけますよね?」 「そうだな。」 色よい返事とはいえない。でもこんなところでめげちゃいけない。 「行きたいなー、先輩が行かないならだれかほかの人と行きますけど。」 そう言った瞬間彼の眉毛がぴくりとあがるを感じた。 いままで片手間だった彼の意識がこっちに向いたのを見て私は勝った!と心の中でつぶやく。 「ほかって、誰だよ。」 「水族館に興味ありそうな、慎司くんとか。」 そんなことあるわけないのに、私の誘導に見事に引っかかった先輩は 不機嫌さと嫉妬心が表情に表れて、ああやっぱり私って思ってる以上に愛されてるのかも、 と思って笑顔がこぼれそうになるのを一生懸命こらえてすまし顔で返事を待つ。 「いく。」 どすの利いた声が返ってきた。 「いってやるよ!」 「ほんとですか!やった、いつ行きます?」 うれしくて笑えば先輩は今度は私を見つめ照れたように目線をそらす。 「いつでもいい、お前が決めろよ。」 「本当ですか、んじゃ、来週の日曜日とか。」 うきうきしてどんな服を着よう、何を見ようなんて計画を立てている私。 そこに先輩はぴったりと寄り添ってきて、小さな声で一言。 「だから、俺以外といくなよ。」 赤いかおでそう言った先輩に多少の罪悪感を感じて、こんな風にしてごめんなさいと心の中で謝って。 同時になんて愛しい人だろうと心のそこから思って。 彼の唇に少し恥ずかしいけど口付けた。 これで許してくださいと思いつつ。




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