紅く赤く


夕暮れの教室、入る日差しは赤くてまぶしいほどで、 そんな中彼女は目を細めながら外を見ていた。 グランドからは部活の声が聞こえそれを見ているのだろうか。 彼はそれすらさえぎりたいほど、美しくいとおしい彼女にそっと忍び寄った。 カーテンが風をはらみ、膨らんではしぼみを繰り返し彼女の姿を隠したりする。 そのまま近づいていとおしさをとめられないように抱きしめる。 「きゃあ!!って、慎司くん!?」 いきなりの後ろからの抱擁に彼女は悲鳴を上げるがすぐにやさしい声になる。 やっと見てくれたと思い彼はどこかうれしさを感じる。 自分はどこかおかしいのではないかと思うくらい彼女に対しては欲が多かった。 「慎司くん、びっくりするじゃない。いきなり抱きつかれたら。」 「珠紀さんが気づかないから。僕だったら気づくのに。」 そうすねたように言うと、彼女は笑った。 「ごめんごめん、ちょっと外を見てたらボーっとしてて。」 「何を見てたんですか?」 そこまで彼女の心を釘付けにするものはしっておかないと。 そう嫉妬心が混ざった強い気持でそう問うと彼女はなぜか赤くなった。 「いや、別に何を見てたっていうか、学校を見てたっていうか。」 しどろもどろな様子に彼はかわいいと思う。 けれども知りたいとも思う。 「じゃあ何を考えてたんですか?」 「え!?それは・・学校とかのこと?」 「どういうふうに?」 この瞬間彼女はうっとうめくような声を上げた。赤くなりながら。 彼女の腰をつかみ、唇を耳元に寄せてつぶやく。 「教えてください。」 その効果はてきめんで顔がさらに赤くなった彼女は ぶつぶつとずるいだとか、どこで覚えたのだかとかつぶやく。 「あーもう、慎司くんのこと考えてたの!」 やけくそに言われた言葉はちょっとだけ予測できていたものうれしくて、 大人になりたいとおもいこんな瞬間ポーカーフェイスでいたいと思っていた彼も顔が赤くなるのが感じられた。 まだまだ大人になれない。 けれどもそれを見られたくなくて後ろから抱きしめた体をさらにぴったりと抱きしめる。 前を向いている彼女には彼の顔が見えないから。 「初めて慎司くんと会ったのも学校だったなぁとか、いろいろ。」 いろいろの言葉は最後小さくなり、うしろから見える彼女の耳が真っ赤なのが見える。 彼は心臓の音がどくんと強くさらに強く早く鳴るのを感じて。 後ろ側な彼女をまるで踊らすようにくるりとこちらに強引に向ける。 彼女はきゃっと小さな声を上げながらこちらを向いて。 赤く夕日に染まった顔はそれだけではなく赤くて、それでも彼女は彼をまっすぐ見上げた。 いとおしそうにはにかみながら。 彼はもう耐え切れないと思い、けれども怖がらせないようにそっとそっと口付ける。 「ん。」 「先輩真っ赤ですね。」 「な、な、慎司君だって!」 そう言った後、二人額をつけて笑いあう。 「夕日のせいだよ。」 「はい、夕日のせいですね。」 太陽は傾き暗くなり始めた中もう一度唇をかさねる二人がいた。




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