雨音のワルツ
雨が降って、外はしとしと、最近は梅雨だから雨ばっかり。
するべき作業も少なくて、暇をもてあましてばかり。
「あーあ。雨なんてつまんない。」
きっと動物だってそう思ってる。
私は暇だから、チハヤの家に言って作りもしない複雑で手間のかかる料理のレシピ本を読んでるふりして開いたまま。
レシピ本はきれいだからすきだけど、いまいち作る気にならない。
畑違いな気がするから。
そんな私が真剣に見ているわけじゃないのしってるのか、
チハヤは私にあったかいホットココアをくれた。
「はい。」
渡されたホットココアは熱すぎずぬるすぎず私を暖める。
まるでチハヤみたいに私の心もジンわりとあっためる。
「おいし!」
「よかった。」
しとしと雨音が聞こえる。
チハヤは台所で何かしてて、私はレシピの本をけだるく一ページめくった。
「でも僕は好きだな。」
急に帰ってきた返事に私は何のことか初めわからなかった。
だから振り向いて彼を見れば、台所のシンクに寄りかかって、ちょっと意地悪な笑顔を浮かべている。
はじめのころはこれがただの笑顔だって思ってたけども、
だんだんこれは何かいたずらをするときの笑顔だってわかってきた私。
「僕は、雨すきだよ。」
「何で?」
そうもう一度繰り返されたら聞かないわけにはいかず、
聞いた私にひときわ笑顔をむけてチハヤは言った。
「だって君といる時間が長くなるだろう?」
しとしと、雨音が聞こえる。それは音楽みたいで心地よい音。
もうちょっとくらい雨続いても良いのにな。
私はくもった窓の外を見ながらそんなこと考えた。
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