とける、ふあん


昔、チハヤと約束をしていて、いろいろと急用が重なって遅れたときがあった。 そのとき、はじめは信じられないくらい彼は怒っていた。 でも冷静になった彼は言った。 ーーーずっと親の顔すら知らなかったから、君も僕をおいてったかとおもって不安だった。 もう二度とそんな思いさせないって心にちかった。 それから、結婚して、今。 私は雪の道を走っていた。 「今日は五時に帰るね。」 約束をしたのは私。 けれども、途中、忘れてた用を思い出して間に合うか不安ながら買い物に言ったけど。 案の定間に合わず。 きっと不安だろう。 きっと悲しんでる。 結婚したときにも彼を悲しませないって誓ったのに。 不安にさせないって誓ったのに。 こんなんじゃ愛想つかされちゃうよ。 走って、走って。 息がより濃く白くなって。 冬なのに体が暑い。 勢いよく、ドアをあけた。 「チハヤ!」 呼んだ私の声には、笑顔のチハヤ。 「おかえり、アカリ。」 その手には暖かい湯気を放つ料理。 「どうしたの、走ったの?すごい雪だし。」 「ち、はや?」 「何?」 私が心配してたチハヤは笑顔で迎え入れてくれて。 私の心配すらしてる。 それは不安なんて何もない、幸せそうな顔で。 ああ、チハヤは過去の鎖を断ち切れたんだ。 そして、今幸せを感じてくれてるんだ。 そうおもったら今度は私が泣きたいくらいうれしくなって。 思いっきり背中に抱きついた。 「アカリ?!」 「チハヤ。」 「どうしたの?」 「大好きだよ。」 「うん。」
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